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危機管理小論  2010年

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DSC_6173-1.jpg鳩山内閣の危機管理体制への不安(2010.1.12)



前回記したイエメン、アルカイダの情勢。
テロや北朝鮮のミサイルの脅威、大災害など、国家危機管理を必要とする非常事態が起きたとき、鳩山内閣は対応できるのでしょうか。

これを機に、鳩山内閣の危機管理体制の脆弱性についていくつか論じてみたいと思います。

①双頭の鷲
組織にとって、頭(トップ)が2つあるということは、大変なマイナス要因です。なぜならば、命令が2途に出る可能性があるからです。

現在の民主党は、鳩山総理と小沢幹事長の、まさにツートップ体制。
藤井財務相の辞任の原因のひとつともいわれる、予算策定時の暫定税率問題。
藤井氏は本来、財源確保の観点からは「暫定税率維持」を唱える立場でした。
それでも、鳩山総理が掲げるマニフェスト重視の姿勢を尊重して、政府の一員としては「暫定税率低下」を主張したにもかかわらず、小沢幹事長の反発に屈した鳩山総理が自ら主張を撤回、暫定税率は維持されたのです。
これでは振り回された格好の藤井氏の口から「相当疲れた」という言葉がでるのも、むべなるかな、です。

内閣総理大臣の鳩山氏と、閣僚でもない党幹事長の小沢氏、国の政策を決定権はどちらにあるのか。そして、これが、国家危機管理の場で起きたらどうなるか。

指揮命令系統、責任の序列は一元化しておくことが、組織の原則です。

②命令・変更・混乱
これは、米国のアナポリス海軍兵学校に掲げられている格言のひとつです。
トップが、一度出した命令を訂正・取り消しをすれば混乱が起きる、つまり「朝令暮改はすべからず」ということです。

太平洋戦争中のミッドウェイ海戦。それまで連戦連勝していた日本海軍は、大きな戦力を保ってミッドウェイ作戦に突入しました。
当初は艦船攻撃用に108機を兵装していましたが、日本軍優勢からくる楽観と第二次攻撃も必要との情報から、指揮官である南雲提督は陸用爆弾の兵装に変更という命令を出してしまいました。
結局この命令変更により時間を費やしている間に、米軍の奇襲に遭い、日本は大敗北を喫したのです。

鳩山内閣も暫定税率(撤廃→据え置き)、子ども手当(所得制限しない→する→しない、財源は全額国庫負担→一部地方負担)、高速道路無料化(全線→一部)と変更を続け、普天間基地移設(県外→現行案、嘉手納統合も候補)については結論を先延ばしして迷走中です。

こんなことを繰り返し、国民の期待を裏切ってばかりいるから、内閣支持率が48%(12/21 朝日新聞)に急落したのです。

③不決断
危機に際してのトップの最大任務は、「決断を下すこと」です。
その決断とは常に2択で、「やる」か「やらない」か、「Yes」か「No」かしかありません。

鳩山総理は「最後は私が決める」と口癖のようにいいながら、普天間問題では「県民の思いを」と言いながら先送り、予算についても最終的に小沢幹事長の意見伺いをするなど、自身では何も決められません。
藤井財務相の件も、辞任の申し入れは12月22日にあったというのに年をまたいで1月6日まで決断をしませんでした。

「不決断」とは、誤った決断をするよりも悪く、大きなマイナスをもたらす可能性があります。

独ソ戦開始の際、ソ連は1日で1200機を失うというドイツからの奇襲を受けました。
そのときのソ連・ルイチャゴフ中将はモスクワへ請訓電報を打ちます。
「我、独軍の攻撃を受けつつあり、如何為すべきか」
ソ連国防人民委員会からの指示は「挑発に乗るべからず」。
ルイチャゴフ中将は前線で被害を目の当たりにしながらこの指示に従い何もせず、結果ソ連軍は潰滅し、その責任をとってルイチャゴフ中将は死刑に処されました。

危機に際して総理が決断できなければ、国民の生命・身体・財産は守れないのです。

④ネバー・セイ・ネバー
「決して~ない」とは、決して言ってはいけないという、戒めです。

鳩山政権が抱える3Kのひとつ、「カネ」の問題についての会見での発言で、鳩山総理は「何も知らなかった」「私腹を肥やしたことなどない」と否定の発言を繰り返しました。
小沢幹事長の献金問題でも、最近では元秘書の石川知裕衆院議員が「やましいところはない」と言い、昨年3月の西松献金問題の際には、小沢氏自身が「何らやましいことはない」「強制捜査を受けるいわれはない」を強弁し続けました。
もしも今後、新たな証拠がでてきたとき、どうするのでしょう。

阪神大震災の直後、当時の田中真紀子科技庁長官が職員に「原発は地震が起きても大丈夫か?」とたずねたところ、担当者は「絶対に大丈夫」と答えたそうです。
ところが震災後1年も経たないうちに、高速増殖炉「もんじゅ」の事故が発生しました。耐震技術どころかナトリウム漏出を防ぐ技術も万全ではなかったことが露呈したのです。

ものごとに「絶対」はありません。
予測不能なことに対しては、「決して~ない」ではなく、最悪に備えて留意して発言すべきなのです。


以上、4つの問題をあげてみました。

テロ・大事件のように、即断即決が必要な非常事態が起きたとき、いまの鳩山内閣の考え方ではとても対応できません。
2010年、国民を守るための大きな危機管理に目を向け、早急にその体制を整える年であって欲しいと願います。

DSC_6264-1.jpg年頭の御挨拶にかえて(2010.1.8)



明けましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願いします。

先日行われたサッカーアジアカップ予選の最終戦、日本は見事勝利をおさめ、来年の本戦出場権を獲得しました。

しかし、試合が行われたイエメンは、昨年12月25日に起こった米国航空機爆破未遂事件に関与したアルカイダ系武装組織の拠点となっていた国で、年明けには各国大使館が一時業務を停止したり、イエメンの治安組織が武装組織メンバーを殺害するなど、まさに不安な治安情勢の中にありました。
今回の試合は軍や警察500人による警護の中で開催されましたが、日本が誇る第一線のサッカー選手たちが無事にプレーできて、本当に良かったと思います。

さて、アルカイダが再び活発になろうとする中、私は考えました。
もし、日本でこのようなテロの予兆があったら、また万が一にも非常事態が起きたら、鳩山内閣は危機管理対応ができるか・・・・。

1月7日、私は時事通信社・内外情勢調査会などが主催する新春恒例の新年互礼会に出席してきましたが、鳩山総理の約10分間のスピーチを聴いて、私は違和感を覚え、今の日本の危機管理に強い不安を覚えました。

スピーチの冒頭、2~3分を割いて、東京都の年越し派遣村を視察した際の話をし、その中で「憲法で保障される最低限のお暮らしというものを、政府としてもしっかりと見いだしていかなくてはならない」という発言をしました。

この方たちの生活の保障ももちろん大事です。
3食個室付きの生活を短い期間だけとはいえ提供された多くの入所者は、いまも仕事と住まいを求め、真剣に生きようと努力しているでしょう。

しかし、中には規律を破って酒盛りをしたり、都から支給された就労活動費を持ち逃げしたりした人がずいぶんいたとのことです。
この人たちに「基本的人権が保障されていない」と同情する余地はありません。
彼らをも救うことが第一ならば、母親から12億円もの献金を受け、6億円の納税を納めた、その資金力の一部でも寄付をした上でモノを言うべきではないでしょうか。

億万長者がホームレスに対して「基本的人権」を掲げて同情するそのスピーチは、非常に空々しく聞こえました。

1月6日付けの読売新聞社説に、鳩山内閣の重要テーマは「3K-景気、基地、献金」であると書かれています。

まさにその通り。
数百人のホームレスの人たちをたった一度だけ見て“国民目線の”発言をするより、国のトップとしてこの国全体の景気対策、日米同盟のあり方を見据えた政策をたて、そして自らと小沢幹事長の献金問題についてきちんと説明責任を果たすことこそ、今の鳩山総理に求められていることです。

国家危機管理の優先順位のつけ方は、リーダーにとって非常に大事なことです。

12月21日には米国でクリントン国務長官が藤崎一郎大使と普天間問題について会談をしました。
報道どおりクリントン長官が呼び出したのか、実際は藤崎大使が出向いたのか定かではありませんが、普天間問題はそれがニュースとなるだけ深刻な事態だということです。

この危機が、鳩山総理には理解できないのでしょうか。

このような中で、冒頭に記したようなテロの危険がわが国に起こったら・・・ホームレス対策で年頭スピーチの多くの時間を費やすような総理に、国家危機管理はできるのでしょうか。

続きは次回述べます。

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